Backdoor Hepatologist in Iowa

アイオワ大学消化器肝臓内科医師のブログ 内視鏡から肝臓移植まで色々と取り扱ってます

肝臓内科医の武器

内科医として、自分はどれだけ武器を持っているかと言う話。
 
まず土台としての内科的能力、正直アメリカでトレーニングされた内科のと比べると、自分の一般内科の知識の狭さに日々嘆息。これはまぁ日々是勉強なので、それをモチベーションにして精進するのみ。
 
一方自分の専門である消化器内科はアメリカにおいても比較的手技オリエンテッドで(これは例えば循環器内科にしても同じだろう)、またそうした処置モノは経済的な利益を生むので、伝統的に内視鏡礼賛と言う風潮がある。自分も内視鏡は一生続けるつもりで取り組んでいる。しかし、肝臓内科医としての仕事、特に米国のHepatologistに関しては、こんにち手技がほとんど無くなっていると言っていい。昔は肝生検はアメリカでも肝臓内科がやっていたようだが、超音波ガイドではなく打診に基づいたブラインド肝生検である。うちの科でも、ある一定の年齢を超えた肝臓内科医はそのやり方を知っているものの、自分も含め中堅以下はやり方を知らないし、危なくてやりたくないので、ほとんどの症例は放射線科に超音波ガイドでお願いします、というパターンが残念ながら多くなっている。自分は日本で超音波ガイド下肝生検をやっていたので、その数を増やそうと奮闘中。合わせて新しい超音波機器の購入を上層部と話し合っている。現在うちの科にあるのは10年以上前の鈍重なヤツなので。
 
自分の日本でのメンターである肝臓内科の大家の先生は、肝癌もHCVも話題になるずいぶん前から、どちらを中心に進めていこうか考えた上で、両方とも取り組むことにして、今ではどちらの分野でも権威であると言う凄まじい先生なのだが、その先生がしみじみ言っていた、「昔は肝臓内科医はただ見ているだけで自分で直すことができなかった。でも今は、肝炎もHCCも薬と技術を武器にして、自分の手で治せるようになったんだからやりがいが全然違う」、という重い言葉を思い出す。自分もそういう医者になりたいなーと思ってこれまでやってきたつもりである(その”武器”のひとつとして肝移植内科にも取り組んだ)。現在HCVは薬でほとんどの症例がウイルス排除できる時代になった。HBVも少なくともかなりコントロールができるようになっている。肝癌に関しては以前書いたように、まったく新しいサービスラインを作らなきゃいけないと言う困難が待っていたが、マイクロは凝固術を行うようになって「武器」を手に入れた状態である。
 
今し方、HCV(大雑把に言えばHBVも)は薬でほぼ治せる所になったと書いたが、やりがいが増したかというと実はそう話は単純ではなく、逆に工夫をする余地が激減したことにより正直物足りなさを感じないではない。
 
そこで、肝臓内科医がリードする肝臓移植医療を自分の「武器」にできるか、という話になる。ただし正直、肝臓移植は外科医が手を下すもので内科医はそのサポート役であると言う風潮がなきにしもあらず。これは日本でより顕著だが、アメリカでもそういう雰囲気を感じることがある。そこで自分が常日頃思っている(思うようにしている)のは、5年生存率80%の肝移植に対して、経験と知識でそれをどうやって85%、90%(理想は100だが現実的にはその程度)に上げていくかが我々移植内科医の腕の見せ所(=困難な症例にどう対峙するか、というひとつの「武器」)だと思っている。
 
日本にもアメリカにも、アロガントな医師はいる。内科医も外科医もそれは同じ。ただ今回は外科医の話。今の職場には1人日本人の腫瘍外科医の先生がいるのだが、この先生は医療的にも人格的にも大変素晴らしく尊敬しているのだが、そうでないのも正直複数いる。お前の内視鏡の診断技術が信用できないからポリペクした大腸の近くに点墨をし直せと言ってくる(しかもそれを見越してクリップを打ってCTを撮ったのを診ていない、指摘したら半笑いで”Oh, thank you for letting me know"というだけ)、血液検査もせずに”患者が黄色く見えるから肝臓悪くなってるはずだから見に来い”と言われ、診察後にDiscussionしようと思ったらこちらの顔も見ずにずっとFacebookをスマホで見ている、10年以上年長の内科医に対して”その肝機能障害に対するアプローチは間違っている”とキャンサーボードの面前で言い放つ、、、。
 
肝移植内科医が持っているもう一つの武器は、相当に強力な飛び道具である。それは、すなわち移植外科医だ。その武器をうまく使いこなせるかどうかも含めて、肝臓移植内科医の力量が試されると思っている。すべては患者アウトカムを高めることであり、しょもない自分の感情は置いておかなければいけない。自戒もこめて。