Backdoor Hepatologist in Iowa

アイオワ大学消化器肝臓内科医師のブログ 内視鏡から肝臓移植まで色々と取り扱ってます

去年の振り返りと新年の抱負、アメリカ臨床留学の機会創出

 

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<去年の振り返り>

1) 診療・教育には大分慣れた

2) アイオワに来てからやっと1本、原著論文を通せた(筆頭で通算10本目)

3) 肝癌ablationのサービスを立ち上げ、少規模ながら1年を通して運営できた

4) 反省:フェローを指導して出したPublicationは症例報告1本のみ

5) 自省:週末の飲酒を楽しみにしすぎて少し太った

 

<新年の抱負>

1) 肝癌診療のイニシアチブを腫瘍内科医から肝臓内科に委譲するシステムを構築

2) 初期の肝障害から移植に渡る自身の診療に、一層のダイナミズムを持たせる

3) 胆膵疾患に少しずつ手を広げる(まずはPSCや自己免疫性膵炎・胆管炎等)

4) 年1-2本は筆頭・セカンドあるいはCorrespondingで論文をコンスタントに出す

5) 酒(と付随するツマミ)を控える

6) 日本の若手医師を対象とした、肝臓病+肝移植内科の臨床研修プログラム@UIOWAを創設する(現時点では来年1月スタートが目標。期間は1年間の予定)

 

抱負の(6)については実現するかはまだまだ未定。でもとりあえず出来る方策は尽くしてみる。しっかりと臨床に触れる機会を持てるフェローシップにせねばならない(肩書きはVisiting clinical fellow)。恐らくTOEFLのスコア(iBTで79/120点?)を求めることになる(追記:USMLE/ECFMGは一切不問)

無給のポジションなので、奨学金をゲットするか、貯金をこしらえてから来てもらうしかない。さて、この暫定プログラムは果たして若い先生にとって魅力的に見えるのか?だとして、どれだけハングリーな先生がいるんだろう?楽しみです。

アルコールと肝移植、フェローの成長、グリーンカード

9月に外来で診た症例が、肝移植の適応評価ラウンドの俎上に。

アルコール肝硬変だがまた禁酒3ヶ月。Social supportは手厚く、これまでAlcoholismに関連した症状は皆無で、腹水貯留に気づいて初めて近隣のGIを紹介されて初めて肝疾患の存在に気づかれた、というストーリー。MELD-Naは初診時24、3ヵ月後29。禁酒にもかかわらず着実に悪化している。Waiting listに載れば比較的早期に移植に至る可能性がある。また歩けているうちにリストに載せたいと思い早めの適応評価を開始した。

アルコール性肝障害に対する肝移植の是非については一定の見解は得られていない。たとえば、極端な話、何年か前NEJMにフランス(!)の施設からの報告で、直前まで飲んでいても重度のアルコール性肝炎に対しては肝移植は適応だろう、どうだ!というエポックメーキングなレポートが出たが、いまだ広いコンセンサスには至っていない。

日本では、2年前の時点では”生体は施設ごと、大体6ヶ月の禁酒が前提のことが多い”、”脳死は18ヶ月の禁酒と精神科の診察”が必須だった。この手の基準は洋の東西を問わずころころ変わるので現在がどうなっているかは不明。

あくまで個人的には、ざっくり言って医師は原則性善説を採るべきと考えているので、アルコール依存が精神疾患である可能性が高い以上、そしてICD10でも規定された疾病である以上、定められた基準をクリアする場合全例移植適応と考えている。一定の基準、というものの、科学的にアルコール依存の”寛解”を評価する確固たるエビデンスは無いので、その基準は国ごとでもよいし、移植施設ごとでも良い。現在うちの施設では”数ヶ月”の断酒と再発防止プログラムへの参加、が基準である。数ヶ月、というあいまいな基準でいいのかという疑問はここでは問わない。自分の意見は、6ヶ月とか3ヶ月とか具体的な数値にすべきと思うが、さまざまな事情がありあくまでも”数ヶ月”という基準になっている。ので、自分はこれに従って適応患者が1-2ヶ月禁酒しても改善せず、今後の改善も見込みにくいと判断した症例を移植評価するのである(あるいは1-2ヶ月でよくわからない場合はさらに待って改善の見込みの無い時点で、最長6ヶ月まで見た上で)。 

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2年目フェローの内視鏡の上達を垣間見てうれしい気分になる。もうこれ以上、自分の内視鏡処置のテリトリーを広げるつもりは無いので、今後は後進の指導に力を入れねば。もう13年目だし。日本的軽度沈静下挿入を教えるというのもその一つ。日本に帰れば凡百の内視鏡医だがここではちょっとだけ重宝される。うれしいが威張れたものではない。

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グリーンカードの手続きのため、州都Des Moinesまで出頭し、月曜朝8時に指紋採取。期日を指定され(選択の余地なし)、家から車で2時間なので小さい子持ちのみとしては前日ホテルに泊まらざるを得ず。期日を記載した通知が来たのが10日前だったので入院患者のラウンドを同僚に頼むなどばたばたしたが、無事完了。

面接、4つのプレゼン、Complicated LT cases

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先週末はフェロー候補のインタビュー。母数は忘れたが、200だか300だかの応募書類の中から選ばれた30人がインタビューに呼ばれるので、彼ら彼女らのCVはすばらしく、研究実績も盛りだくさんで、USMLEを高得点で合格している(自分で受けたことが無いので実感としてどれぐらいすごいのかはわからない)。みな胸を張って自分の業績を語る姿はいっそ清々しい。目に余るほど高飛車な候補者は今回はいなかった。

インタビュー後に御礼のメールをもらうことが多い。今回は自分が面接を担当した10人のうち5人。これまでは面接される側ばかりだったので、面接をしてくれた人に対してメールを送ることに実際どれだけの意味があるのか判然としなかったが、逆の立場になると、面接される側だったときには想定していなかった効果があることがわかる。ひとつは、メールをもらうことで物理的に顔を思い出すのでより印象に残る(初見の印象が悪かった候補者の場合は逆効果かもしれない)。あとは文面がコピペであると印象が悪く、インタビュー当日に話した内容を詳しく書いてあるととても印象がよい。

 

引き続いて、仕事ではこの2週間ほどはTransplant hepatologyのサービス週間。比較的落ち着いているが、Non-complianceからのAcute cellular rejection症例や未診断のPTLD症例があったりと、教育的には充実していてフェローは満足している様子。

 

10月半ばに日本に一時帰国する前の1ヶ月で、60分枠のプレゼンが4つ(肝移植後CMVについて、HCCのablationについて、薬剤性肝障害に対するステロイド治療の是非について、肝移植の適応と生体肝移植について)があり、疲弊。全部引き受ける必要はなかったんじゃと思う反面、何事も勉強也と自分を鼓舞する。

一時帰国の目的のひとつはJDDWへの参加である。アイオワ州医師免許(以前書いたように、自分のは通常のライセンスではなくspecial license と呼ばれる特殊なもの)は日本で消化器内科の専門医であることを前提に担保されているので、専門医維持のためときどきこうして参加しなければならない。面倒だがやむを得まい。おいしい魚と、つけ麺が食べたい。飢えているといってよい。

(写真は先週末のりんご狩りです)

レジデント今昔、秋とHawkeye

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大学病院なのでとにかく目下の先生を教える機会が異常に多い。GIのフェローならばある程度知識があることがわかっているので、どこから説明すればよいか簡単だが、1年目とか2年目の内科レジデントの場合、肝硬変て肝癌のリスクなんですか?みたいのがたまにいるので(仕方ないんですが)、どこから説明を始めるか、そしてどこまで説明をするかのさじ加減が難しく、面白い。相手の手ごたえもよく、説明したことを噛み砕いてカルテに遍く記載してくれているのを見ると、自分の満足度はかなり高く、そして酒が進む。‥‥というようなレジデントと先日働いた、という話です。聞くところによると、Hem/OncとGIで迷っているとのこと。優秀な1年目の女医さん。しかも2カ月目。将来が有望ですね。自分の2カ月目を思い出すと恥ずかしいです。点滴が取れなくて悩んで、夜は神○坂で飲んでいました。

今日の朝はずいぶん寒くて摂氏12度。いまだiPhoneの天気は摂氏設定。あと2-3回子供をプールに連れて行きたかったがもう遅そう。ビールのうまい季節が終わっていくということでもある。来週は肝癌アブレーションの症例もあるし、週末は来年のフェローのインタビュー、アメフトのシーズンが始まり(Go Hawks Go)、そうして秋になっていくんでしょう。

フレッシュマンの素朴な疑問、Japanese beatle

3年毎の契約更改のために書面の準備をしましょう、というセミナー。
肝癌治療のサービスを(超小規模ながら)立ち上げたので、たぶん切られることは無いと思うが、査定内容に学生およびトレイニーからの評価が含まれていると聞いてちょっとビビッている。Clinical-educator trackなので当然ではあるのだが。英語がつたないのでできるだけ丁寧に教えようと努力はしているものの、果たしてどれだけ伝わっていたのか。楽しみ半面、怖い気もしている。

今月前半は肝臓の入院患者コンサルトを率いる。フレッシュマンと回るのは疲れるものだが、勉強になる面も。Sodium benzoate(安息香酸ナトリウム)および亜鉛製剤が肝性脳症に効果を発揮するメカニズムについて教えてほしいとピカピカの瞳でたずねられたが、とっさのことと語彙不足のためうまく説明できず。翌日手書きの尿素サイクルを用意して(もちろん回診前に単語を調べながら準備)、昨日はattendingとして答えられなかったのは恥であった、すまぬ、と頭を掻きながら説明。毎日々々冷や汗です。

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写真はJapanese Beatle(あえて解像度落としてます)。日本からの”外来種”だからこの名前がつけられたのだそうな。今年は冬の温暖な気候のせいで異常発生している模様。我が家のベランダの蔦に大量に群がっていたので、試しに蜂退治のスプレーを噴霧したところ全て瞬殺。大量の死骸が(ばっちい話なので以下略)。