Backdoor Hepatologist in Iowa

アイオワ大学消化器肝臓内科医師のブログ 内視鏡から肝臓移植まで色々と取り扱ってます

フレッシュマンの素朴な疑問、Japanese beatle

3年毎の契約更改のために書面の準備をしましょう、というセミナー。
肝癌治療のサービスを(超小規模ながら)立ち上げたので、たぶん切られることは無いと思うが、査定内容に学生およびトレイニーからの評価が含まれていると聞いてちょっとビビッている。Clinical-educator trackなので当然ではあるのだが。英語がつたないのでできるだけ丁寧に教えようと努力はしているものの、果たしてどれだけ伝わっていたのか。楽しみ半面、怖い気もしている。

今月前半は肝臓の入院患者コンサルトを率いる。フレッシュマンと回るのは疲れるものだが、勉強になる面も。Sodium benzoate(安息香酸ナトリウム)および亜鉛製剤が肝性脳症に効果を発揮するメカニズムについて教えてほしいとピカピカの瞳でたずねられたが、とっさのことと語彙不足のためうまく説明できず。翌日手書きの尿素サイクルを用意して(もちろん回診前に単語を調べながら準備)、昨日はattendingとして答えられなかったのは恥であった、すまぬ、と頭を掻きながら説明。毎日々々冷や汗です。

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写真はJapanese Beatle(あえて解像度落としてます)。日本からの”外来種”だからこの名前がつけられたのだそうな。今年は冬の温暖な気候のせいで異常発生している模様。我が家のベランダの蔦に大量に群がっていたので、試しに蜂退治のスプレーを噴霧したところ全て瞬殺。大量の死骸が(ばっちい話なので以下略)。

FMT

画像に含まれている可能性があるもの:空、屋外

 

ついに糞便移植(Fecal Microbia Transplant, FMT)に手を出してしまった。
https://www.youtube.com/watch?v=-nDPjGAGEak&t=71s

とはいっても、自分のやる事は、(1)外来で適応を決める(抗生剤に抵抗性のC. difficile colitis)、(2)大腸カメラを回腸末端まで挿入する、(3)250ccの精製水で伸ばした糞便を注入する、の3工程。

このウンチは健康なボランティアからのドネーションでまかなわれている。今回のはマサチューセッツ州で採取。

うまく効きますように。

さて7月になり、新しいフェロー及び新しい同僚スタッフが入職してきた。日本の4月と比べるとあまり”ようこそいらっしゃいませ”感がないものの、気持ちを新たに新年度頑張っていきましょう。

肝臓内科医の武器

内科医として、自分はどれだけ武器を持っているかと言う話。
 
まず土台としての内科的能力、正直アメリカでトレーニングされた内科のと比べると、自分の一般内科の知識の狭さに日々嘆息。これはまぁ日々是勉強なので、それをモチベーションにして精進するのみ。
 
一方自分の専門である消化器内科はアメリカにおいても比較的手技オリエンテッドで(これは例えば循環器内科にしても同じだろう)、またそうした処置モノは経済的な利益を生むので、伝統的に内視鏡礼賛と言う風潮がある。自分も内視鏡は一生続けるつもりで取り組んでいる。しかし、肝臓内科医としての仕事、特に米国のHepatologistに関しては、こんにち手技がほとんど無くなっていると言っていい。昔は肝生検はアメリカでも肝臓内科がやっていたようだが、超音波ガイドではなく打診に基づいたブラインド肝生検である。うちの科でも、ある一定の年齢を超えた肝臓内科医はそのやり方を知っているものの、自分も含め中堅以下はやり方を知らないし、危なくてやりたくないので、ほとんどの症例は放射線科に超音波ガイドでお願いします、というパターンが残念ながら多くなっている。自分は日本で超音波ガイド下肝生検をやっていたので、その数を増やそうと奮闘中。合わせて新しい超音波機器の購入を上層部と話し合っている。現在うちの科にあるのは10年以上前の鈍重なヤツなので。
 
自分の日本でのメンターである肝臓内科の大家の先生は、肝癌もHCVも話題になるずいぶん前から、どちらを中心に進めていこうか考えた上で、両方とも取り組むことにして、今ではどちらの分野でも権威であると言う凄まじい先生なのだが、その先生がしみじみ言っていた、「昔は肝臓内科医はただ見ているだけで自分で直すことができなかった。でも今は、肝炎もHCCも薬と技術を武器にして、自分の手で治せるようになったんだからやりがいが全然違う」、という重い言葉を思い出す。自分もそういう医者になりたいなーと思ってこれまでやってきたつもりである(その”武器”のひとつとして肝移植内科にも取り組んだ)。現在HCVは薬でほとんどの症例がウイルス排除できる時代になった。HBVも少なくともかなりコントロールができるようになっている。肝癌に関しては以前書いたように、まったく新しいサービスラインを作らなきゃいけないと言う困難が待っていたが、マイクロは凝固術を行うようになって「武器」を手に入れた状態である。
 
今し方、HCV(大雑把に言えばHBVも)は薬でほぼ治せる所になったと書いたが、やりがいが増したかというと実はそう話は単純ではなく、逆に工夫をする余地が激減したことにより正直物足りなさを感じないではない。
 
そこで、肝臓内科医がリードする肝臓移植医療を自分の「武器」にできるか、という話になる。ただし正直、肝臓移植は外科医が手を下すもので内科医はそのサポート役であると言う風潮がなきにしもあらず。これは日本でより顕著だが、アメリカでもそういう雰囲気を感じることがある。そこで自分が常日頃思っている(思うようにしている)のは、5年生存率80%の肝移植に対して、経験と知識でそれをどうやって85%、90%(理想は100だが現実的にはその程度)に上げていくかが我々移植内科医の腕の見せ所(=困難な症例にどう対峙するか、というひとつの「武器」)だと思っている。
 
日本にもアメリカにも、アロガントな医師はいる。内科医も外科医もそれは同じ。ただ今回は外科医の話。今の職場には1人日本人の腫瘍外科医の先生がいるのだが、この先生は医療的にも人格的にも大変素晴らしく尊敬しているのだが、そうでないのも正直複数いる。お前の内視鏡の診断技術が信用できないからポリペクした大腸の近くに点墨をし直せと言ってくる(しかもそれを見越してクリップを打ってCTを撮ったのを診ていない、指摘したら半笑いで”Oh, thank you for letting me know"というだけ)、血液検査もせずに”患者が黄色く見えるから肝臓悪くなってるはずだから見に来い”と言われ、診察後にDiscussionしようと思ったらこちらの顔も見ずにずっとFacebookをスマホで見ている、10年以上年長の内科医に対して”その肝機能障害に対するアプローチは間違っている”とキャンサーボードの面前で言い放つ、、、。
 
肝移植内科医が持っているもう一つの武器は、相当に強力な飛び道具である。それは、すなわち移植外科医だ。その武器をうまく使いこなせるかどうかも含めて、肝臓移植内科医の力量が試されると思っている。すべては患者アウトカムを高めることであり、しょもない自分の感情は置いておかなければいけない。自戒もこめて。

臆病な医者、バッドニュースそしてイースター

先日までに数例の肝腫瘍の焼灼術を行ってきた。その中で気づいたことがある。この種の刺し物の際、術者(Attending)ではなくレジデントやフィジシャンアシスタント(PA)が患者に説明をすることがほとんどで、実際の病状説明の場あるいは同意取得の場にAttendingが出ていかない極端な話、狙った腫瘍に全くヒットしなかったとしても、バッドニュース(ヒットしなかったのでもう一度同じ治療を繰り返しましょうと言う説明も付属。当然患者さんはため息。うんざりした顔)を伝えるのは実際の術者ではなくその下で働いているチームのメンバーである。Attending/術者の側からすると、自分でバッドニュースを伝える必要がなく、ひょうひょうと次の処置に臨めば良いわけで、逆にレジデントやフェロー、PAにしてみれば、自分が直接手を下したわけではない、責任の無い処置について結果が悪かったことを伝えるのはある意味ラクなのであまり、良心の呵責はないだろう。これは自分がフェローであった頃の記憶およびAttendingになって以降の状況から考えると、ほぼ間違いないのではないかと思う。淡々と治療・処置をこなしていく上ではこういった形でないと精神的にやっていられないのかもしれない。ただ、「うまくいくだろうか」「うまくいっただろうか」とドキドキしながらCT scanの結果を待ち、恐る恐る読影をして、外れていたら重い気分で患者にそれを伝える、こういった葛藤なくしてどこまで技術が向上するんだろうかという疑問は正直ある。つまり失敗しても自分がバッドニュースを伝えなくて良いので、まぁこのあたりまででいいんじゃないの?みたいな話が出てきてもおかしくないし、実際これまでの数例の経験で放射線科医の先生たちからそういった雰囲気を感じないでもない。どちらが正しいのかわからない。でも自分が患者だったら、失敗したら嫌だなぁとドキドキしながら針をさしてる先生のほうが治療してもらいたいなと思う。個人的には全般的に臆病な医者のほうがアウトカムはいいと思ってます。

先週末はイースター。子供と公園に行ってエッグハント。かなり春めいてきたので、家の花壇に花を植えたり、芝生の隙間に無数に生えてるタンポポを引っこ抜いたり、人生初めてのガーデニングもどき的なことをやっている。正直得意ではないが子供の情操教育も含めてがんばろうと思います。週末はオンコールなので酒が飲めないのがすでに今から気が重い。

Tumor Ablationと夕焼

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 アメリカの病院では、肝癌に対するラジオ波またはマイクロ波焼灼術は、肝臓内科医ではなく ほぼinterventional radiologist によって行われている。一方日本では肝臓内科医が施行するのが一般的で、自分も消化器内科のトレーニング及びその後のスタッフとしての経験を通じて、ある程度の数の処置を行ってきた。

現在のプログラムディレクターにその話をしたところ、ぜひアイオワ大でもやろうと言う話になり、放射線科や外科、病院執行部との兼ね合いを経てついにすべての問題が解決されたのが先々月の1月。話を始めたのが去年の2月ごろなので、おおむね1年かかってここまでたどり着いたことになる。

第一例目の患者さんを先月治療して、合併症なく無事に肝癌を治療できたことを確認した。おそらく日本の肝臓内科医の先生方がやっている治療よりも何年か遅れたレベルであろうと言うことは、日本の他の先生と話をしていて容易に推察できる。しかし自分としては、新しい場所で新しいことに取り組むという挑戦自体に純粋にエキサイトしているというのが正直なところ。患者さんに不利益がないように、症例を慎重に選んで施行する限りにおいては、Justiceの面からも担保されるのではないかと考えている。少なくとも、今までほとんど腫瘍焼灼術が行われていなかったこれまでの当院の現状を鑑みると、適切な治療を適切に管理さんに届けるという観点から、アイオワン達にも利するところがあるだろうと信じている。まだまだ始まったばかりだし、システムも技術も改善の余地はあるので、ハンズオンセミナーに参加したり(4月に手配済み、参加者は放射線科医ばっかで肝臓内科はオレヒトリ状態)、知識をアップデートしたりと精進を続けるのみである。

仕事の帰りにスーパーでお使いを頼まれたときに撮影した1枚。時々こういうびっくりするような夕焼け空に出くわすのはさすが大陸なんだなぁ。明日も頑張ろう。